2021年にはドローン機体の登録制度が、2022年にはドローン操縦に免許制度が導入される見込みが発表され、ドローン業界に大きな変革の時が迫っています。
これらの制度にはまだまだ不確定な情報も多く、ドローンスクール関係者やドローンの民間資格所有者の方は、きっと気を揉んでおられることでしょう。
免許制度が導入されれば、ドローン操縦が国家資格に準ずる扱いとなります。
つまり、自動車やバイク、船舶などの操縦と同等の扱いになるということです。
これにより、ドローン操縦の周辺環境にどんな変化が起こるのか。
免許制度はどのようにして導入・運用されていくのか。
民間資格の所有者にはどんな影響が出るのか。
この記事では、こうした疑問に対し、すでに分かっている情報と予測を交え、分かりやすく解説していきます。
目次
ドローンの操縦が免許制度(国家資格)になると何が変わる?
国土交通省への許可申請の必要性
現在の航空法では、屋外でドローンを飛行させる場合、国土交通省への事前の許可承認申請が必要とされています。
許可申請を行うには、下記2パターンの方法があります。
- 飛行実績をもとに自分で手続きを行う
- 民間資格の運営機関経由で認定を受け手続きを行う
2022年に免許制度が導入されると、免許を取得した時点で「国土交通省からの飛行許可」がおりたことになるため、事前の許可承認申請が不要になると考えられています。
そのぶん、免許取得に必要となる実技や学科の難易度が上がるのではないかと予測されます。
免許試験の運用機関
免許制度が導入されると、現在のように、複数の民間機関が独自基準に則った資格を運用するのではなく、国土交通省によって一元化された基準に則り、全国どこででも共通の免許試験が行われるようになると想定されます。
自動車の運転免許制度で考えてみましょう。
自動車の免許試験勉強は、全国津々浦々の教習所や合宿所に通って行うのが一般的です。
しかし、免許を取得するためには、必ず「運転免許試験場(運転免許センターとも)」で試験を受け、これに合格しなければなりません。
運転免許試験場は、国が委任する各都道府県の公安委員会が管轄しており、日本全国共通の基準に則って試験が行われています。
ドローン免許制度において、この免許試験を執り行う団体はまだ明らかにされていませんが、国から指定された特定の民間機関が代行するか、国が新設する専門機関が運用するのではないかと考えられます。
「免許」として取り扱われることのメリット
ドローン操縦のスキルが、国家資格に準ずる「免許」として取り扱われるようになると、以下のメリットが発生すると想定されます。
- 専門性が高まることで、職業としての価値が向上する
- 免許の所持によって明確なスキル証明が可能となり、スキルアップ・キャリアアップにつながる
- ドローンを利用した新ビジネスが開拓されることで、仕事の間口が広がる
- ドローンの所有者・機体登録が義務化され、テロや犯罪へのドローン悪用を防止できる
- 操縦者全体の技術の底上げにより、ドローン事故を軽減できる
とりわけ、ドローン関係者にとって大きなメリットとなるのが1~3の3項目です。
以下の段落で詳しく見ていきましょう。
1.専門性が高まることで、職業としての価値が向上する
2022年に免許制度が導入されれば、許可申請さえ取っておけば誰でもドローンを操縦できる現状から、免許を取得した人のみがドローンを操縦できるようになります。
これにより「ドローン操縦」の専門性が高まり、職業としての価値が大きく向上すると期待できます。
2.免許の所持によって明確なスキル証明が可能となり、スキルアップ・キャリアアップにつながる
発行元によって基準が異なる民間資格と違い、国が一元管理している「免許」であれば、そのスキル証明をより明確に行うことが可能になります。
「ドローンを操縦できる=国が認めた基準を満たしている」ということですから、ドローン操縦者のキャリア向上に繋がります。
3.ドローンを利用した新ビジネスが開拓されることで、仕事の間口が広がる
ドローンの免許制度の導入は、現在の航空法では不可能な「レベル4」の実現を目指したものです。
詳細は後述しますが、レベル4が実現すれば、これまでは飛行不可とされてきた場所やシーンでもドローンを操縦することができるので、新しいドローンビジネスが多数開拓されるはずです。
これにより、ドローン免許取得者の求人が大きく増加することが予測されます。
免許制度になることによって想定される変更点
免許制度の導入にあたって、「ドローン操縦のために免許試験をクリアしなければならない」ことに加え、下記の変更も出てくると想定されます。
- ドローンの所有者および機体認証が義務化される
- 運行管理ルールが法令で明確化され、飛行計画の通報などが義務化される
- ドローン免許は「一等資格(レベル4に該当)」と「二等資格(現在、飛行許可・承認が必要とされている飛行)」に区分される
「1.ドローンの所有者および機体認証」については、すでに法律として制定されることが決まっています。
この施行後に未登録のドローンを飛行させると「懲役1年以下または罰金50万円以下」に処されてしまうので注意しましょう。
この罰則レベルは、自動車損害賠償責任保険未加入の自動車を運行した場合と同等です。
【移行or新規取得?】現状の民間資格所有者はどうなるのか
それでは、ドローン免許制度が導入された場合、民間資格の所有者はどうなるのでしょうか。
こちらもまだ明確な答えは出ていません。
ただ、国が指定した民間資格の所有者であれば、免許試験の一部あるいはすべてが免除されるのではという考えが一般的です。
ドローン免許の「二等資格」は、現在の「飛行許可・承認が必要とされている飛行」にあたる範囲のものなので、免許試験なしで免許取得ができると思われます。
一方、「一等資格」を取得する場合、現時点ではまだ実現できていないレベル4に該当するものですので、たとえ民間資格所有者であっても、追加や新規で免許試験が必要になるのではと予想されます。
免許制度の導入によってドローンの活躍幅が大きく広がる
前述したとおり、ドローンの免許制度導入の背景には、レベル4の実現によってドローンの利活用幅を大幅に向上させようという国の意向があります。
ドローンを最大限利用することで「空の産業革命」を進めていこうというわけです。
これが実現すれば、ドローン配送や農業用ドローンの活用、撮影ビジネスなど、現在ではまだ試験段階であったり限定的な運用しかできていない分野で、ドローンを有効活用できるようになります。
建築物などの安全点検や土木測量といった分野でも、ドローンの活躍には大きな期待が寄せられています。
まとめ
2022年を目処に進められているドローンの免許制度導入について、想定される変更点や民間資格所有者への影響、今後の展望についておまとめしました。
確かに、ドローンの免許制度導入によって制限が増えることは事実です。
違反状況によっては厳しい罰則が課せられることもあり、これまでのように、気軽に自由にドローンを操縦できなくなるケースが発生しそうです。
しかし、「空の産業革命」が実現すれば、ドローンを活用した新ビジネスが飛躍的に発展するはずです。
仕事の増加やドローン操縦の価値の向上は、ドローンの免許所有者にとって、非常に大きなメリットをもたらすことでしょう。
ドローンの資格取得を考えている方は、取得時期や免許の種類(一等資格/二等資格)など、自分の目的に合ったものを選び、就職や転職、副業にお役立てください。
文:東堂ちなみ 写真:PhotoAC